Pro Tools 2024.6 新機能
2024年6月20日
Pro Tools 2024.6ソフトウェア・アップデートでは、iZotope、Synchro Arts、Sound RadixのARA 2のサポート、Mixed In Keyの2つの新しいMIDIエフェクト・プラグイン、Media Composerへのセッション・エクスポートなど、音楽制作とポストの両ユーザーに重要な新機能が導入されています。また、Dolby Atmos®の機能強化、MIDIノートの視覚化、セッションデータの検索とインポートの改善、メモリーロケーションの機能強化なども含まれます。
新機能の技術的な概要については、What’s New In Pro Tools 2024.6ガイドとリリース・ノートをこちらでご確認ください。最近のリリースの概要などについては、Pro Tools新機能ページ(英文)をご覧ください。
ARA 2 プラグインのサポート
Pro Tools 2024.6 ARA 2プラグイン
iZotope RX Spectral Editor, Synchro Arts RePitch, VocAlign, Revoice Pro, Sound Radix Auto-Align 2, Auto-Align Post 2 の6つのプラグインがPro Tools 2024.6でARA 2 をサポートします。既存のCelemony Melodyne 統合と組み合わせることで、オーディオをラウンドトリップさせることなく、Pro Toolsでこれらのツールを大幅に迅速かつ簡単に活用できます。さらに、有効なサブスクリプションと永続版アップグレードプランをお持ちの場合、このリリースの一部としてiZotope RX 11 Spectral EditorとSynchro Arts RePitch Elementsが無償提供されます。
各プラグインの詳細は、以下のブログをご確認ください。
iZotope RX Spectral Editor ARA 2 Proの統合について
新しく含まれるMIDIプラグイン
Captain Chords と Human Lite MIDI プラグイン
2024.6では、Mixed In Key による 2 つの新しいMIDIプラグイン、Captain Chords Lite と Human Liteが提供されます。Captain Chords Liteは、任意のキーを選択し、転回、置換、および経過音を完全に制御して、コードやコード進行を即座に作成できるプラグインです。コード進行とリズムのライブラリも含まれています。Human Liteは、クオンタイズされたMIDIパフォーマンス、ループ、さらにはトラック全体にライブパフォーマーのグルーブ感を加えるプラグインです。Captain Chords LiteおよびHuman Liteプラグインは、有効なサブスクリプションと永続版アップグレード・プランをお持ちのすべてのPro Toolsユーザーが利用できます。各プラグインの詳細とPro Toolsでの使用方法は、以下の動画をご確認ください。
Mixed In Key Captain Chords Lite と Human Liteプラグインの詳細
セッションデータをインポート
インポート・セッションデータ・ウィンドウは、セッション間のデータ交換のために、ほとんどの人が使用しているPro Toolsの基本機能です。Pro Toolsに機能が追加され続けるにつれて、セッションはより大きく複雑になることもあり、このウィンドウでの操作をより簡単にするため、次の変更を行いました。
Pro Tools 2024.3 「セッションデータをインポート」
Pro Tools 2024.6 「セッションデータをインポート」
セッションを保存する際、Pro Toolsは少量のサマリー・データを保存するため、セッションを開くときに、セッションをより速くスキミングできます。既存のセッションの概要には、トラックの種類、幅、名前に関する情報がすでに含まれているため、トラックの色、非表示の状態、フリーズ状態、トラック上のクリップやオートメーション、マーカーの有無の情報を追加し、データをフィルタリングできるようにしました。トラック名入力によるフィルタリングも可能になりました。また、トラックに関するより多くの情報が視覚化されています。
Pro Tools 2024.6「セッションデータをインポート」のチェックボックス
フィルタリングを使用すると、”一致するトラック”が適用されるトラックの数を制限できます。つまり、一致させたい項目をフィルタリングし、”一致するトラック”ボタンを押して、フィルタを変更し、前の一致を破棄することなく、再度一致させることができるのです。
ウィンドウ右側にトラックリストを表示してスペースを広げ、また、上下左右にサイズ変更できるようにしました。また、ウィンドウの一般的なレイアウトを最適化し、ソースのプロパティ・セクションを非表示できるようにすることで、より多くのインポート・オプションを画面に収めやすくしました。
Pro Tools 2024.6 「セッションデータをインポート」 ウィンドウ
スペースを確保するためにトラックタイプのアイコンを使用したので、編集ウィンドウやミックスウィンドウと同じようにクリックして開閉できるフォルダ・アイコンが表示されます。フォルダ・トラックをインポートすると、中身が含まれないことがあったので、各フォルダの横に新しいボタンを追加して、フォルダを閉じた状態でも、フォルダとその中身のすべてをインポートできるようにしました。
Pro Tools 2024.6 「セッションデータをインポート」 ウィンドウ
柔軟な表示/非表示オプション
インポート・セッションデータ・ウィンドウでのトラックデータのフィルタリング機能が追加され、編集ウィンドウでの新しい表示/非表示オプションも識別可能になりました。クリップがあるトラックだけを、選択範囲内やインサート・ポイントにも含めて表示するオプションも追加されています。これにより、素材がないトラックを含むテンプレートから構築されたセッション上でも、ミックスに反映しているトラックを簡単に見つけることができるようになります。このコマンドは、本来クリップを含むはずであった空のトラック(オーディオ、インストゥルメント、MIDI、ビデオ)のみを除外します。
Pro Tools 2024.6 表示/非表示オプション
オートメーションを含むレーンを拡張できるようになりました。これにより、オートメーション・ブレークポイントのあるレーンや、ブレークポイントのないランプチェンジがあるレーンの部分を見つけることができます。
Pro Tools 2024.6 オートメーションを含むレーンの表示オプション
これらのコマンドに、”以前に表示したトラックを復元”コマンドのキーボード・ショートカットなど、割り当て可能なキーボード・ショートカットが追加されました。
検索とフィルタ
インポート・セッションデータ・ウィンドウにテキストフィルタを追加することで、アプリ全体で検索とフィルタの機能がさらに向上しました。
クリップリストには、クリップを検索するウィンドウがありましたが、フィルタが適用されているかどうかがわかりにくいケースがありました。セッションデータのインポート・ウィンドウと同じテキストフィルタ・ボックスをクリップリストに追加したことで、フィルタリングが際立ち、アクセスしやすくなりました。また、ショートカットキーでアクセスすると、クリップリストが閉じていても開きます。
Pro Tools 2024.3 検索とフィルタ
Pro Tools 2024.6 検索とフィルタ
また、初期設定に検索ボックスを追加し、入力したテキストと、タブや機能名に一致した場所が強調表示されます。これにより、正確な名前や場所がわからない場合に、キーワードで初期設定内のアイテムを見つけるのがはるかに簡単になりました。
Pro Tools 2024.6 初期設定での検索ボックス
DOLBY ATMOS改善点
Pro Tools 2023.12ではDolby Atmos内部レンダラーが導入され、Pro Tools 2024.3ではカスタム・ライブ・リレンダリングが導入されました。Pro Tools 2024.6では、Dolby Atmosがさらに強化されています。
Dolbyと同様、モニタリングとカスタム・ライブ・リレンダリング用の新しいフォーマットをいくつか導入しました。9.1.4 と 7.1.2 では、より多くのリスニング環境に対応するために内部レンダラーを改善しました。Stereo Directでは、カスケード・ダウンミックスを経ずに、ミックスの直接的なステレオ表現を聴くことができます。
Pro Tools 2024.6 Dolby Atmos Stereo Direct
バイノーラルモードの設定を編集ウィンドウとミックスウィンドウから直接割り当てることができるようになり、再生中にミックスのエフェクトをすぐに聞くことができます。Dolby Atmosのグループ設定は、編集ウィンドウとミックスウィンドウから割り当てることもでき、コンテキストがわかりやすくなります。
Pro Tools 2024.6 編集ウィンドウでのDolby Atmosグループ
Dolby Atmosグループをレンダラー・ウィンドウからソロにしたりミュートしたりできるようになりました。ベッドやオブジェクトにグループを割り当てるとすぐに、ソロ/ミュートボタンが自動的に使用可能になります。
Pro Tools 2024.6 Dolby Atmos グループのソロとミュートボタン
レンダラー・ウインドウの新しい設定パネルでは、さまざまなリレンダー設定、I/O設定、トリムとダウンミックス、グループ設定など、基本的なDolby Atmos設定にすばやくアクセスできます。以前のバージョンでは、セッションのトリムとダウンミックスの設定がユーザーのデフォルトと異なる場合、オレンジ色のテキストを使用していました。トリムとダウンミックスボタンは常に表示されるとは限らないため、パネルを閉じたときにこの色を設定アイコンに引き継いで、同じ通知を受け取るようにします。
Pro Tools 2024.6 Dolby Atmos 設定パネル
最後に、Dolby Atmos内部レンダラーからの信号をバウンス、コミット、フリーズする機能を追加しました。つまり、内部レンダラーを使用している場合は、バウンスミックスを使用して、レンダラーの出力先であるモニターパスの物理出力を選択できます。バウンスには、レンダラー出力、モニターパスに手動で割り当てられた信号、およびレンダラーまたはモニターパスのマスター・フェーダーでの処理が含まれます。
また、入力にライブ・リレンダリングを設定しているバウンストラックをフリーズ、コミット、またはトラックすることもできます。これは、リレンダリングされたステムにダイナミクス処理が必要な場合に、受信トラックのインサートが含まれるため、非常に便利です
メモリーロケーションの改善点
メモリーロケーションとマーカーの機能を継続的に改善してきました。Pro Tools 2023.6では、トラックマーカーが導入されました。Pro Tools 2023.12では、4つのマーカールーラー、メモリーロケーション・ウィンドウでメモリーロケーションを複数選択する機能、前後のメモリーロケーションをナビゲートするためのキーボード・ショートカットが追加されました。Pro Tools 2024.6では、この機能がさらに洗練されています。
メモリーロケーションの一括削除は好評でしたが、この実装により、特定のワークフローで非効率性が発生することに気付きました。例えば、上向き矢印や下向き矢印などの特定のキーコマンドが、誤ってメモリーロケーション・ウィンドウにフォーカスされたままになっていると、編集ウィンドウではなくメモリーロケーション・ウィンドウ上で処理されたり、リコール列で shift+click キーボード・ショートカットを使用して、現在のインサートからマーカーの位置を選択する方法がわかりにくいといったことがあった為、それらの点を改善しました。新たな管理モードでは、オンの場合、メモリーロケーションを複数選択したり、削除したり、名前を一括変更したりすることもできます。オフの場合、一度に1つのメモリーロケーションしか選択できなくなる為、以前のバージョンのPro Toolsとほぼ同じように動作させることが可能です。
Pro Tools 2024.6 メモリーロケーション管理モード
タイムラインの挿入ポイントを基準にして、前後のメモリーロケーションへ移動および選択できる新しいモードが追加されました。これらのコマンドは、メモリーロケーション・ウィンドウでのフィルタリングに基づいているため、ターゲットのトラックまたはルーラーのみでフィルタリングし、コマンドに反映するマーカーを制限できます。これは、ソングセクションやコメント専用のルーラーがある場合、そのルーラーにあるマーカーだけを確認できるため、便利です。
Pro Tools 2024.6 メモリーロケーションで前後に移動
MEDIA COMPOSER セッションのエクスポート
Media ComposerとPro Toolsのエンジニアからなるチームを結成し、インターチェンジやサウンド・トゥ・ピクチャーのワークフローを改善するために、Media Composer 2022.12でPro Toolsセッション・ファイルをエクスポートする機能から始まり、相互運用性の向上を最終目標として、各アプリケーションに対して汎用的な改善を行ってきました。トラックマーカーとセッション範囲のエクスポートに続き、Pro Tools 2024.6では、Media Composer互換セッション(.ptxmファイル)をエクスポートできるようになりました。
Pro Tools 2024.6 Media Composer セッションのエクスポート
.pxtmファイルは、エクスポートするトラックのセットを選択し、コピーを保存ウィンドウを開き、Media Composer互換セッションのエクスポートを選択することで作成されます。Pro Toolsは、各クリップのフレーム境界、またはステム全体のフレーム境界にオーディオをレンダリングします。パンニング・フォーマットがステレオ、5.1、または7.1の場合、Pro Toolsにはサンプルの正確なボリュームとパン・オートメーションを維持するオプションもあります。または、常にレンダリングするように選択することもできます。ダウンミックスはPro Toolsの係数設定を使用するため、ダウンミックスのサウンドをコントロールできます。
Dolby Atmosのリレンダリングを.ptxmファイルとしてエクスポートすることもできます。ライブ・リレンダリングをAux入力トラックに割り当ててから、それらのトラックとタイムライン範囲を選択できます。これは、Dolby Atmosのグループを活用し、リレンダリングを異なるグループに分割し、そのままのDolby Atmosレンダリング・ステムをMedia Composerに直接渡すことができる優れた方法です。Auxトラックまたはタイムラインに追加されたマーカーはすべて含まれます。
Media Composer 2024.6は、これらのタイプのセッションをサポートする最初のリリースとなります。16色のマーカーカラー、サンプルの正確なボリュームとパン・オートメーションもサポートします。また、サブフレーム境界でオートメーションの編集を続行することもできます。
.ptxm ファイルは、セッション・ファイルであり、他のセッション・ファイルと同様にPro Toolsで開くことができ、そのすべてのコンテンツがMedia Composerでサポートされることが保証されています。今後、各アプリケーションの機能を拡張し、.ptxm ファイルがサポートする内容を増やしていく予定です。
MIDIノートの視覚化
以前は、ピッチ表示がなかったので、録音または再生されたノートのピッチ値を確認する方法がありませんでした。今回、MIDIエディタ(ドック式とウィンドウ)に2つの表示オプションが追加され、MIDIノートとキーボードにピッチラベルを表示できるようになりました。さらに、フラット表示ボタンでは、MIDIノートとキーボードの両方でフラット表示とシャープ表示を切り替えることができます。これらは、ドック式MIDIエディタとウィンドウMIDIエディタにそれぞれ異なる設定を保存できます。
Pro Tools 2024.6 MIDIノートの視覚化 シャープとフラット
外部MIDIキーボードまたはバーチャル・キーボードから再生されたノートが、キーボード上で見やすいように色付けされるようになりました。
Pro Tools 2024.6 MIDIノートの視覚化 再生中のノート
PRO TOOLSとSIBELIUS間のコピー&ペーストの改善点
Pro Tools 2024.3では、Sibeliusとの間でMIDIをシームレスにコピー&ペーストできる機能が導入されました。Pro Tools 2024.6ではこの機能が強化され、両方のアプリケーション間でキー、拍子、テンポをコピー&ペーストできるようになり、音楽制作のワークフローがより効率的になりました。
Pro Tools 2024.6 と Sibelius コピー&ペースト
Pro Toolsでは、MIDIクリップをコピーすると、その特定のセクションに対応するキー、拍子、テンポデータもコピーされます。ルーラーをタイムラインの選択範囲に組み込むことで、Sibeliusからすべてのノート、キー、拍子、テンポデータを簡単に貼り付けることができるようになりました。
Pro Tools 2024.6とSibelius 全てのルーラーをコピー&ペースト
個々のルーラーまたは複数のルーラーを選択し、通常どおりペースト・コマンドを使用することで、ルーラーのデータをMIDIノートに個別にペーストできます。
Pro Tools 2024.6 と Sibelius 個別のルーラーをコピー&ペースト
Sibeliusでは、システム選択範囲(紫色)を作成し、MIDIをクリップボードにコピー、または、クリップボードに貼り付けコマンドを使用することで、音符、調号、拍子記号、テンポを同時にコピー&ペーストできます。
Pro Tools 2024.6とSibelius MIDI をクリップボードにコピー
SKETCH ドラッグ&ドロップの改善点
シーン全体とアレンジメント全体をSketchウィンドウから編集ウィンドウにドラッグすると、オーディオとMIDIのクリップがコピーされます。2024.6以降は、Pro Tools |PlayCellプリセットをインサートした状態でSketchから編集ウィンドウにドラッグすると、Pro Toolsは対応するプリセットを持つAAXプラグインを自動的に追加します。
Pro Tools Sketch 2024.6 PlayCell ドラッグ&ドロップ
その他
2024.6 にはその他の機能強化も多数含まれており、詳細についてはこちらを確認してください。
その中のいくつかをご紹介します。
AVAILABILITY
Pro Tools 2024.6リリースは、サブスクリプション、または永続版ライセンスで有効なソフトウェア・アップデート+サポートプランをお持ちのすべてのPro Toolsユーザー、およびすべてのPro Tools Introユーザーにご利用いただけます。Avid Linkからアップデートするか、Avidアカウントでもダウンロードできます。Pro Tools Sketch iPadアプリのアップデートは無料で、こちらから入手できます。Pro Toolsのソフトウェア・アップデート+サポートプランを更新する必要がある場合、または最新バージョンに更新したい場合は、こちらのオプションをご覧ください。また、Pro Toolsを初めて使用する場合は、30日間の無料トライアルで最新バージョンをお試しいただけます。
新機能の詳細は、What’s New in Pro Tools 2024.6ガイドはこちらでご確認ください。
Dolby AtmosはDolby Laboratoriesの登録商標です。Celemony、Melodyne、DNA Direct Note Access、ARA Audio Random AccessはCelemony Software GmbHの登録商標です。
CHRIS WINSOR, ELPINIKI PAPPA, ORLA O’ROURKE
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